PRPRお役立ち情報

広報計画の立案

広報計画を立てる際に知っておきたいポイントと注意点

広報活動を行う際は、やみくもに思いついたことをやるのではなく、事前に戦略を立て、「年間広報計画」をしっかりと設計することが大切です。近年は時代の変化とともに、ますますその重要性は増しています。

旧来型の広報活動の場合は、商品企画やマーケティングなどの初期段階から広報部門が参加するケースは少なく、商品やサービスを発売する最終の段階に行うプレスリリースやメルマガ配信などの業務がメインでした。そのため、広報部門が単独で実行して完結する業務が多く、事前の広報計画は重視されない傾向がありました。

ただ、近年は状況が異なります。広報部署が初期段階から参加して、経営やマーケティングとコミュニケーションをとりながら一体化して広報に取り組み、できるだけ早期に最適な広報計画を設計することが求められています。

広報計画の目的や立て方、注意点などについて解説します。

年間広報計画を立てる目的。なぜ必要なのか

年間広報計画を立てる目的。なぜ必要なのかのイメージ

「広報計画」とは?

広報計画とは、会社の経営方針や事業計画をもとに「広報戦略」を立て、それを年間スケジュールに落とし込んだものを指します。目的は、企業や商品・サービスの認知を拡大して、企業価値を高めることです。

期間は、四半期、半期、年間など、さまざまなケースがあります。いずれにせよ、単発ではなく、ある一定期間での広報計画を立てることで、全社で共通の目的に取り組み、広報の価値を最大化することを目指すものです。

そのなかで今回は1年間の期間で策定する「年間広報計画」に着目し、それをつくることのメリットをまずは5つのポイントに絞って解説します。

「年間広報計画」を立てる、5つのメリット

年間広報計画を立てるメリットはさまざまなものがあります。広報担当者の方にぜひ頭の中に入れておいていただきたいものは、次の5点です。

  • ①経営メンバーを含む会社全体で1つの方向を向き、広報価値を最大化する
現在の広報活動は広報部門が単独で行うものから、初期段階からチームで行うものへと変化しています。それにもかかわらず全社で共通認識をもつことができる具体的な計画や資料がなく、何をするのかが不明瞭な状態だと、混乱を招くことは必須です。

それにより、他部署のモチベーションが下がったり、せっかくチャンスがあるのに取材を獲得できなかったりと、さまざまなデメリットが生まれます。そのような事態を防ぐために、全社で1つの方向を向いて取り組むために計画が必要になるのです。

  • ②他部署も含む「協力体制」をつくりあげる
1つの方向を向くと同時に、広報部門に対して「協力体制」をつくるためにも、広報計画は重要な役割を担います。

広報部門は、経営、開発、営業、広告など、さまざまな部署とコミュニケーションをとりながら、最適な広報活動を考え、ときには他部署の担当者に取材対応を依頼する機会も出てくるでしょう。連携や協力を依頼する際に、きちんとした計画がなければ理解を得ることは難しくなります。

  • ③社内の有限なリソースを明確に分ける
多くの企業は広報活動にかけられる予算や人員などのリソースが限られているものです。その状況で「あれもやりたい、これもトライしたい」となってしまうと、どれもが中途半端になってしまい、成果をあげることはできません。

その点に関しても、年間計画を事前に立てて、リソースをそれぞれに適切に分配して考えることで、1つひとつの施策に最大限注力できて、成果がうまれやすい環境をつくることができます。

  • ④広報活動の「軸」をブレないものにする
広報部門がその場の思いつきで「あれもこれも」と情報を発信してしまうと、「その商品やサービスの何を訴えたいのか」という一番大事なところが曖昧になってしまいます。

広報の「軸」がブレると、本来訴求したいものではない間違った情報が伝わってしまい、最悪のケースではマイナスブランディングになり、信用を失うことにもつながりかねません。

「ブランディング」と「広報活動」の関係については、こちらで詳しく解説しています。
ブランディングは、企業の長期的・持続的な成長に効く究極の広報活動

そんなことにならないように、事前に「年間計画」による「軸」を明確にして、計画に沿って活動をすることが大切です。広報部門の軸がはっきりしていれば、他の部門の関連活動もそこから大きくブレることはありません。

  • ⑤話題のタイムリーなイベントを押さえ、露出の損失を防ぐ
メディアが取り上げやすい話題は、毎年決まっています。ワールドカップやオリンピックなどの大型イベントや、クリスマスや母の日などの季節性のイベントなどが、その代表的なものです。

これらの時期に、企業が関連性のないプレスリリースを配信しても、メインのイベントのリリースに埋もれてしまい、取り上げられる確率は低くなってしまいます。

一方で、「年間計画」を立てる際にこれらの年間スケジュールを押さえておくことで、大型イベントは避けたり、季節性イベントに絡めたリリース発信が可能となり、露出確度が高まります。また、いつも同じ内容ではなく、タイムリーなイベントに絡めることでメディア関係者を飽きさせず、注目を集めるきっかけにもなります。

プランづくりの前にすべきこと

プランづくりの前にすべきことのイメージ

広報計画のベースに経営戦略・事業戦略がある

広報部門の担当者は、年間広報計画を立てる前に、「計画」と「戦略」の違いについて、きちんと理解をしておく必要があります。

広報計画は経営戦略や事業戦略をもとにして設計するものであり、経営戦略や事業戦略に対する理解なくして、考えられるものではありません。

そのため、会社が掲げる目指す姿(ビジョンや経営理念など)や経営戦略・事業戦略(短期、中長期経営計画など)を正しく理解し、そのうえで現時点の消費者とのギャップを把握して、いかにしてそれを埋めていくかといった「広報戦略」をまずは考えるステップがあります。

次に、その「広報戦略」を年間スケジュールへと具体的に落とし込んでいったものが「広報計画」です。つまり、経営戦略・事業戦略 ⇨ 広報戦略 ⇨ 広報計画という流れで設計を考えていきます。

広報計画の前につくるべき「広報戦略」3つのポイント

  • ①前提条件(全体方針や予算)の確認と理解
まずは、企業が掲げるその年度のテーマや全体方針、そして広報部門に割り当てられた予算を把握します。どれだけ良いアイデアを思い付いたとしても、方針と合っていなかったり、予算をオーバーしてしまったりすれば、それは実現することができません。

また、このときにできるだけ各部署とも密にコミュニケーションを取り、部門ごとの年間の動きなどもできるだけ掴んでおくことで、より精度の高い広報活動を考えることができます。

  • ②前年度の振り返りによる可視化
今年度の方針や予算をふまえたうえで、前年度の広報活動の振り返りを行います。

プレスリリースの本数、取材獲得数、報道媒体数、メディアリレーションなど、数値化できることは数字で出し、さらに「どのような媒体で、誰に対して、どのように情報発信・認知拡大ができたのか」を調査し、可視化していきます。

このデータを積み上げていくことで、机上の空論ではなく、実績のうえに立った具体性のある施策を考えることができます。

  • ③広報計画の前に広報戦略を考える
次に「広報戦略」を考えていきます。「計画」ではなくまずは「戦略」です。

前述の通り、経営戦略・事業戦略から広報部門の「課題」を明確にします。その課題に対して、広報活動を通してどのように解決し、企業や事業を成長させていくのか、という戦略を描きましょう。

このときに、競合と比較して自社の強みを打ち出せているか、本当に会社の課題を解決する戦略になっているかを徹底的にチェックしながら進めます。

描いた戦略は他部署とも共通認識にまで落とし込めることがベストなので、言語化をして、簡単に理解できるようにしておきたいところです。

「広報戦略」については、こちらで詳しく解説しています。
広報戦略とは:策定方法、成功させるポイントなど

年間広報計画の立て方

年間広報計画の立て方のイメージ

広報カレンダーを作成

「広報戦略」が完成したら、いよいよそれを実現するための具体性ある「広報計画」を考え、1年間のスケジュールに落とし込む「年間広報計画」の策定に入ります。

この段階で、一目で年間の計画をパッと把握できるように、「広報用の年間カレンダー」を作成しておくと、社内やチームでも共有しやすく、ミスが起きづらくなるのでおすすめです。

広報部門は多くの部署と連携しながら活動する「ハブ」となる存在のため、共有カレンダーがあることで、各ステークホルダーとの連携が確実にとりやすくなります。

カレンダーを作成したら、ワールドカップなどの大型イベントや、クリスマスなどの季節性イベントも盛り込み、自社だけでなく世の中全体の動きを捉えるようにしましょう。それにより、さらに効果的な広報計画を策定することができます。

年間広報計画を立てる8つのポイント

ここからは「年間広報計画」をつくるうえで必要な項目について説明します。まずは下記のポイントを明確にすることからはじめましょう。

  • ①前提条件の整理
まずは広報戦略を立てる際に明確にした、広報活動を行ううえでの前提条件(経営戦略・事業戦略、会社が掲げるテーマ、広報部署に求められる役割、目的や目標など)を書いていきます。

このときに数字で出せるものは数字で出し、できるだけ具体的になるよう整理していくことがポイントです。

  • ②課題定義
続いて、広報活動における課題を改めて定義します。

ここも広報戦略を考える際に出したもので、目的や目標を実現するうえでの現状とのギャップと、その要因分析をまとめていきましょう。

  • ③ターゲット
目的を実現するためにアプローチしたいターゲットを明確にします。「20代女性、アパレル関係」など、ここもできるだけ細かく定義します。

また、そこにリーチするために最適なメディアや媒体もあわせて考えます。ターゲットがよく見る、触れるなど、接触する回数が多いメディアほど親和性が高く、ターゲットメディアになりやすいものです。

  • ④施策内容
そのターゲットに対して、具体的に行う広報活動や伝えたいメッセージもあわせて記載します。年間広報計画を立てる時点では、施策内容は細かいレベルまで落とし込めていなくても、イメージや概要で問題ありません。

  • ⑤露出イメージの検討
施策内容が具体的に詰められている場合は、施策内容をどのように露出させていくのか、メディアでどのようなメッセージを発信するのかなども、あわせて書き出していきます。

  • ⑥スケジュール、活動ロードマップ
ターゲットやメディア、施策内容が決まったら、事前に作成した広報カレンダーをもとにスケジュールへと落とし込んでいきます。

施策を行う以前から準備や他部署との連携などが必要になるため、準備期間やその後のフォローなどもあわせて書き込んでおきましょう。

  • ⑦目標と効果測定の方法
広報活動をするうえで目標と、それをどれだけ達成することができたかという効果測定をすることは、次なる打ち手を考えるために重要なことです。

目標は曖昧な感覚ではなく「何を達成したら成功か」を明確に定義しておきましょう。できるだけ「売上200%アップ」など、具体的で、測定可能で、期限が定まっているものにすることで効果測定がしやすく、改善へとつながります。

  • ⑧体制と予算
最後に、広報活動を行うための社内体制と、予算も書き込んでおきましょう。

体制図などにより一目で理解できるようにしておくことで、スムーズに広報活動を進められるようになります。

予算は広報活動に使えるお金であり、年間広報計画の全てをその予算内で行わなければなりません。年間スケジュールを改めて確認しながら、その計画が「絵にかいた餅」になっていないか、再度確認しましょう。

プランづくりでの注意点

3つの視点をもつ

年間広報計画をつくる際は、自社のことだけを考えずに、ステークホルダーや世の中全体のことを意識して、その中で最適化された広報活動を導き出すようにしましょう。

そのためには、下記の「3つの視点」を同時に意識することがおすすめです。

  • ①自社年間計画
どのタイミングで新製品やサービスができるのかなど、部署ごとの年間計画を把握します。

  • ②関係各所、ステークホルダー年間計画
広報は自社だけで成り立つものではありません。関係各所がどのような活動をする予定があるのか、わかる範囲で理解しておきます。それにより、独りよがりではなく、連動した広報活動が可能になります。

  • ③メディア、ニュース年間計画
大型イベントや季節性イベント以外でも、メディアが毎年取り上げるニュースというものがあるので、それも捉えておきましょう。また、テレビ番組改編のタイミングなど今回の広報活動とは関係のないメディアのスケジュールなども把握しておくことで、何らかのヒントになることがあります。

ヒントは過去の施策の中にある

広報計画がうまく立てられないときは、自社が過去に実施してきた広報活動と、その効果を見直してみてください。そこにはきっと、何らかのヒントがあるはずです。

過去の知見や経験を生かしてブラッシュアップした施策を行ったほうが、効果が上がりやすいことは明白です。そのため、活動終了後には必ず効果測定と、次年度に向けた振り返りを行うようにしましょう。

多角的な展開を意識する

完成した広報カレンダー通りに、単発でプレスリリースなどの情報を発信するだけでなく、「どうしたら広報活動が多角的に広がるか」も考えましょう。

たとえば、リリースだけでなく、記者会見やイベント、調査、メディアアタックなど、そのときに限られたリソース内でできることを全てあげ、「単発で終わらせない」ことを意識することも重要です。

世の中は常に変化を続ける。柔軟に対応

年間広報計画を事前にどれだけ綿密に立てたとしても、世の中は思った通りには進んでいかないものです。

そのなかで広報の価値を最大化するためには、計画に固執しないことです。計画はあくまでも予定であり、その状況に合わせた広報を常に考え続ける必要があります。

ただ、変更するときに曖昧な判断をできるだけなくすために、事前に「どのような状況になったら変更の検討をするか」「変更する際の順序」などは決めておくとよいでしょう。

まとめ

まとめのイメージ
今回は「年間広報計画」の考え方、そしてつくり方についてまとめてみました。いかがだったでしょうか。

現在の広報部門は経営やマーケティングなど各部門と密に連携して、ハブとなる存在です。単独で広報を行っていた以前よりも、さらに深く、広い活動が求められています。

ぜひ、この記事を参考にして実際に「年間広報計画」を策定してみてください。

弊社でも、広報戦略策定や広報戦略を軸とした広報活動に関しては幅広くお手伝いしています。ご相談は無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

広報戦略策定に関するご相談はこちらから。
ページトップ